脈が速い(頻脈)
発作性上室性頻拍症,心房細動、発作性心房細動,心房粗動、発作性心房粗動,心室頻拍,WPW症候群,ほか
患者さんへの助言
今元気でなんともないけれど、時々数十秒から数分程度の短時間の軽い症状があるという方は、心臓病であっても今緊急に対応しなければならない可能性は少ないと思います。
しかし,将来重症な脳卒中になったり、命に関わる重大な心臓病が背後に隠れている可能性もあります。症状の重症度と病気の重症度が一致しない怖さがあるのがこの病気です。
心配な時は医師に相談ください。
◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
頻脈発作は診断が重要
この不整脈はタイプによって恐ろしさが全く違います。恐ろしさが症状の重さと一見無関係です。タイプを確定するのが最重要です。
恐ろしさや治療法が全く違うので、まず病名の確定が必要
この心臓病で最初に最も重要な事は、この頻脈性の不整脈では症状の軽い重いと、病気の軽い重いが関連しないことがあることです。一見軽い症状に見えても極めて危険なもの、非常に辛く重症のように見えても、大したことのない不整脈といった具合です。症状が軽いからと甘く見ていると突然死となるのがこの病気の恐ろしさです。
そのために、この病気ではどのタイプの不整脈なのか、病名を確定することがまず最も重要なのです。循環器内科専門医であれば可能です。
病名が決まったら、その後の治療は担当医と相談して進められます。数は圧倒的に少ないですが、もし重大な不整脈が確定したら、不整脈専門医の病院に紹介されるでしょう。
病名の確定
病名を確定するのが重要ですが、症状からだけで患者さんがその病気を確定することは不可能です。専門医の診察を受ける必要があります。
ここではほんの参考程度に病気の症状と病名の関係をお話しします。しかし、この病気が疑われたなら必ず専門医を受診ください。
このグループの病気は主なものとして以下のようです。
1)発作性上室性頻拍症
2)発作性心房細動、心房細動
3)心室頻拍症(非常に少ない)
4)心室細動(極めて稀)
1)発作性上室性頻拍症と2)発作性心房細動が、この症状の原因の大部分を占めます。1)と2)では、その症状に明白な差はありません。症状からだけで患者さんがこれを区別するのは困難です。そして治療法もこの2つでかなり違いますから、そのどちらであるかを確定しなければなりません。どちらかと言えば2)の方が重いと言えます。1)は比較的若い方に多く、2)は比較的高齢者に多く見られます。区別と治療は専門医によく相談してください。
3)心室頻拍症は起きた時の症状が、1)、2)よりも一般的には重くなります。それほど重くないことも時にあります。しかし心臓の病気としては、3)は1)、2)よりもかなり危険と考えます。
4)心室細動は、普通なら「おきれば即死」となるような恐ろしい不整脈です。症状は、ほとんど前兆なく突然意識を失いますが、時に短時間で意識が元に戻ることがあります。意識消失の時間の長さにもよりますが、意識が戻ると一見普通の様に見えますので、非常に危険なこの病気が隠れてしまいます。しかし、いったんこの病気が現れたらそれ以後は厳重な治療を開始しなければなりません。即座に専門病院で検査と治療のために入院が必要です。
よくある発作:症状と治療
よく見かける頻脈発作はそれほど危険ではありません。しかし放置は危険です。きちんと治療を始めなければなりません。まず専門医に相談して下さい。
軽症な頻脈性不整脈の症状、対策と治療
ここから先は、大多数の比較的軽症な方の治療についてお話します。
頻脈性不整脈は、異常の起こり始めた時がもっとも症状が強いのですが,時間が経つにしたがって徐々に軽くなります。あわてなくとも大丈夫です。ほとんどは一,二時間を争うような重篤な病気ではありません。したがって、この病気の治療は,症状が起こる頻度と症状の強さによって若干違いがあります。
発作性上室性頻拍症で症状が軽い場合
・軽い症状が年に2,3回しか起こらない場合
軽い症状が一年に二,三回しかおこらない方には,おこった時だけ飲む薬が処方されます。例えば,数種類の抗不整脈薬のカクテル治療として,症状がおこった時だけ次の三剤を一度に内服すると効果的なことがあります。
・ベータ遮断薬
・カルシウム拮抗薬
・I群の抗不整脈薬など
・症状が月に数回以上起こる場合
症状が月に数回以上起こる方では、予防のためや症状改善のために毎日薬を飲むほうが良いと思います。治療薬としては,次のような薬剤を単独で、または組み合わせて服用します。
・ベータ遮断薬
・カルシウム拮抗薬
・抗不整脈薬
多くの場合,これらの薬を毎日服用すれば、この症状の出現をかなり抑えることが出来ます。
・頻脈発作を、自分で止める方法
発作的に起こったこの症状を止める方法として、頓服で薬を飲む前でも飲んだ後でも、自分で次のようなことを試してみるとよいでしょう。これで止まることがあります。
・深呼吸を繰り返す。
・大きく息を吸って,そのまましばらく息こらえをする。辛くなったら止める。無理はしないこと。
・冷たい水の入った洗面器に顔をつけ,息こらえをする。辛くなったら止める。無理はしないこと。
このような動作は、どれも心臓への迷走神経活動を刺激し,心臓の中で電気信号が伝わりにくくなり、症状が止まることがあります。
心房細動:症状と治療
心房細動は放置すると重症な脳塞栓を起こし、車イス生活になることがあります。必ず、専門医に相談して下さい
心房細動で、脳塞栓の可能性が低い場合
一般的には、この病気では脳塞栓発症の危険性がより重大なので、血栓を作らせない治療を開始したほうが良いとされています。
しかし、60歳代までの方で、健康で働き盛りで、高血圧なし、心不全なし、糖尿病なし、脳卒中の経験もなしの多くの方は、この頻脈性不整脈に関して、それほど深刻に悩まなくてもよいと思います。脳塞栓の可能性が低いとされているからです。抗凝固治療もまだ必要ないと考えられています。
心房細動で、脳塞栓の危険がある場合
(発作性)心房細動では、不整脈そのものはそれほど怖くないのですが、それによって重い脳卒中(脳塞栓)を引き起こしてしまうことが非常に重要です。
心房細動という不整脈では、心臓のある部屋(左心房)で血液の塊(血栓)ができることがあります。心臓内で血液の流れが澱むために起こります。その血栓が心臓の中で動かずに静かにしているうちは問題ありませんが、一旦そこを離れて血液の循環に乗りますと、どこかでこの塊が血管を詰まらせてしまうことになります。
頭に流れて行くと脳の中で血管を塞いでしまい(脳塞栓),腎臓に行けば腎臓の血管を,お腹に行けば腸管の血管を,足に行けば足の血管を詰まらせるというように,新たに重大な病気を作ってしまうのです。これだけは避けなければなりません。
この心房細動が起こっているのであれば、その血栓を作らせない治療を開始しないといけません。不整脈そのものよりも、この塞栓の発症の方が差し迫ってより問題だからです。
抗凝固治療
患者さんが、高齢者、高血圧あり、心不全あり、糖尿病あり、脳卒中の経験あり、等の脳塞栓発症危険因子が複数がある方は、脳塞栓の可能性が普通よりも高いと考えられています。こんな方は、本来の不整脈の治療以外に、心臓内の血栓を作らせないための薬剤(抗凝固薬)を内服したほうが良いでしょう。その薬とは、
・ワーファリン
・新しい経口抗凝固薬(NOAC)
以上のどちらかが勧められています。
ワーファリンは、ビタミンK含有の食品を控えなければ、薬が効かなくなりますので、そのような食品(納豆、クロレラ、昆布、緑色野菜、その他にもたくさんあります)の摂取にかなり注意しなければなりません。また、最適な投与量が人や条件によって違いますので、それを決めるために毎月くり返し採血検査が必要です。一方新しい経口抗凝固薬(NOAC)はビタミンK含有の食品を食べられないという欠点がなく、一般的には薬の用量調節も不要とされています。
しかしワーファリンにはそのような欠点はあっても、新しい経口抗凝固薬よりも優れた点もあります。
1)万一、間違えて薬を多く飲んだ場合や薬が過度に効きすぎた場合には、重大な出血(脳出血、消化管出血など)が起こり易くなります。それを防ぐためにワーファリンなら納豆や野菜を一度にたくさん食べる、バイタミンK拮抗薬を注射するなど、対応が難しくないことです。新しい経口抗凝固薬はそのような対処法がなく最終的には特殊な治療が必要となるかもしれないことです。
2)ワーファリンは新しい経口抗凝固薬に比べて、価格が非常に安いことです。逆に言えば、新しい薬は大変に高価であることです。
3)新しい経口抗凝固薬は用量調節が不要と言われていますが、本当にそうなのか疑問とする意見もあります。過量投与時の重大な副作用があるので、やはりその効果は個人ごとに定期的にモニターしたほうが安全とする意見です。私もそのように感じる一人です。
脳塞栓予防のために、ワーファリンか新しい経口抗凝固薬(NOAC)かの選択は悩ましい問題です。主治医とよく相談して決めてください。詳しい内容は、→リンク先へ「けやき坂コラム:心房細動の抗凝固薬は、ワーファリンかプラザキサか?」
発作性心房細動、その後の推移
心房細動の出現には年齢が非常に重要な因子です。高齢になるほどこの発症率が急速に高まってくるからです。一方、60歳代以下の方では、この発症にも期外収縮(心臓病番号1)出現と同じ様な誘因が関係する場合があります。誘因がはっきりする場合はそれを避けるような生活習慣が治療としてまず大切です。
しかし,誘因が余り関係ない患者さんにとっては,いつ何時このいやな症状が起こるか分かりません。仕事,対人関係,旅行,外出について性格的に臆病となってしまうこともあるようです。人によっては大変につらい症状ですが、直ちに生命に重大な危険があるものではないことを理解して下さい。
多くの場合、この病気は何週間も続くことはなく、普通は数分から長くて2~3日くらい続く程度です。しかし、その時間が長くなると、またはこの発作を何度も繰り返すうちに正常に戻らなくなってしまうことも良くあります。この固定化してしまった発作性心房細動を「慢性心房細動」または単に「心房細動」と言います。
甲状腺機能亢進症がある場合
甲状腺というホルモンを作る小さな器官に異常がある(甲状腺機能亢進症)ことから起こるタイプの心房細動があります。このタイプでは甲状腺の病気を薬で治療することが優先されます。甲状腺の病気が治りますと,しばらく遅れますがこの心臓の病気もよく治ります。アメリカのブッシュ元大統領がこの病気で入院したことが以前報道されました。
当クリニックの心房細動の患者数
当院のような田舎の小さなクリニックであってさえ、このような心房細動の患者さんは発作性と慢性を合計して、約100人が通院されています。それほど今の高齢社会ではこの病気はありふれたものになっています。
心房細動から心不全へ
心房細動は決して恐ろしくて怖い病気ではないのですが、放置していると極めて重症な脳塞栓を発症しやすくなります。また心臓への負担から心不全にもなりやすくなります。心房細動から心不全の発症は現代では最もありふれた組み合わせになりつつあるでしょう。心房細動が心不全の原因の最多数になりつつあります。
それを防ぐためにも心房細動の患者さんはきちんと治療をしておくべきです。「今、何でもないからいい」とは決して言えません。
頻脈発作の特殊な治療
生命に危険がある頻脈性の発作では、かなり高度な治療まで必要となります。
カテーテル治療:カテーテル心筋焼灼術
次のような患者さんにはカテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)という治療方法が勧められます。
・不整脈出現の症状が強く何とか完全に起こらないようにしてしまいたい方、
・妊娠してお子さんが欲しい若い女性,
・何かの制約から、毎日三度薬が飲めない方や飲みたくない方,
・薬を飲んでも症状の頻繁な出現が抑えられない方、
しかし、全ての不整脈がこの治療で完治できるわけではありません。これが有効な不整脈とそうではない不整脈があります。
カテーテル心筋焼灼術とは、足や腕などの血管の中に細く長い電気のコードを入れて,それを心臓の中にまで進めて,そこでこの病気の原因となる心臓の異常な部分を電気で焼いてしまうものです。
この治療法では、心臓手術をしないでも、三時間程度のこの治療が成功すれば,薬を飲まなくても症状はおこらなくなります。最近この治療の成功率はかなり高くなり,考慮しても良いと思います。しかし,この治療が一回では完全に完成せず、数回治療が必要になる方もいます。その点もよく主治医と相談されるとよいでしょう。現在この治療が出来る病院は限定されます。
極めて危険な不整脈の場合
非常に危険な頻脈性不整脈になる方は極めて稀なのですが,もしその時には直ちに治療を開始しなければ生命が危険です。以下の病気が重篤な不整脈と言われます。
1)心室頻拍症
2)ブルガダ症候群
3)WPW症候群に心房細動の合併
4)心房粗動の一対一伝導
5)心室細動
これらは非常に危険であり,自然に治るのを待っていると急死する場合があります。重篤な心臓病ですから厳重な検査と治療が必要です。不整脈の専門医による診察が必要です。
電気ショック(除細動治療)
この危険な異常は、心電図を取れば分かりますが、直ちに入院して薬を注射したり,それが無効であれば胸に電気ショックを与えて、心臓の速い動きを止めなければなりません。
植え込み型電気的除細動器治療
常に死と直面するこの病気は,いったんは治ってもその後の内服薬も難しく,また内服薬だけでは再発を抑えきれないこともあります。これに良く効く内服薬もありますが,万能ではなくまた副作用が強いという欠点もあるのです。
さらに、カテーテル心筋焼灼術もこの病気の一つの治療方法ですが,植え込み型の電気的除細動器という装置の効果が注目されています。この機器の装着によって致死的な不整脈による患者さんの死亡率が大きく減少したことが報告されています。
不整脈診断のための検査
いずれにしてもあなたの病気がどのようなものであるかを調べて,正しい治療を始めなければなりません。そのための検査は、次の手順で行われます。
1:医師の診察,基本的な血液と尿検査,胸部レントゲン写真,心電図
2:ホルター心電図,心臓超音波検査
3:トレッドミル運動負荷検査,心臓核医学検査
4:心臓電気生理学的検査,心臓カテーテル検査
医師による診察,基本的な血液と尿検査,胸部レントゲン写真と心電図については全員の患者さんが該当します。
診断には、心臓が突然速くなった時の心電図を記録して病気を診断するためにホルター心電図で検査する必要があります。ただ,ホルター心電図検査をしている時に、たまたま症状がおこってくれれば良いのですが,もしそうでなければ診断できません。実際に、そのようなことは良くおこるために,患者さんには何度もホルター心電図検査をして頂くことがあります。心臓超音波検査をは、不整脈を起こす背景として、心臓になにか特別な原因がないを確認するために行います。
また、運動によってこの不整脈がどの様に変化するかを調べたり,この不整脈が狭心症と関連がないかを調べたりする必要があればトレッドミル運動負荷検査や心臓核医学検査が予定されます。
診断のために、さらに詳細な精密検査が必要になれば、入院して心臓電気生理学的検査や心臓カテーテル検査が予定されることになります。
頻脈発作の特殊な治療
補足:この不整脈の症状発生メカニズム
(動悸、血圧の低下、脳貧血、息苦しさ、頻尿など)
このグループの病気による全ての症状は,心臓の動きが突然異常に速く(頻脈)なったために起こってくるものです。この病気では心臓の動く回数が正常の一分間に70回位から,急に120回以上になってしまうのです。回数が徐々に増えて120回になる訳ではありません。それがこの病気の症状の特徴です。
・心臓の動きは自律神経が調節
普通、健康な方では、日常の活動状態に合わせて自分の心臓がゆっくり動いたり、早くなったりして動く回数を調節していることなど、ほとんど自覚せずに一生生活していくわけです。心臓が動いていることいさえ忘れているのが普通であると言えるのです。
心臓の動きは脳からの交感神経と迷走神経という二つの自律神経の神経線維によって、様々な命令を受け無意識のうちに調節が行われています。心臓の動く回数と動く力を増やすアクセル役は交感神経が担当し,その動きを抑えるブレーキ役は迷走神経が担当します。
静かに休んでいますと心臓の動きは一分間に50回から80回程度で安定しています。眠っていればブレーキ役の迷走神経が優位となりもっと遅く動きますし,体を動かせばアクセル役の交感神経が優位となりもっと速く力強く動くようになります。重いものを持ったり,走ったりすれば、心臓の動きが一分間に100回以上になるのは普通のことですが,誰も自分の心臓が速く動いていることを意識することはありません。
ところがこのグループの病気になりますと,静かにして心臓の動きが70回であった方が,急に120回以上にも跳ね上がってしまいます。その瞬間にあなたは自分の心臓の存在をはっきり自覚するわけです。心臓が異常に速く動きますから,この速い拍動をドキドキとして異様に自覚します。
この症状を動悸と呼びますが、心臓の病気でこの症状がおこれば何かの検査と治療が必要です。
・急に心臓の動きが早くなる理由
心臓の病気で動く回数が急に多くなる原因には、主に心臓内の異常な電気の伝わり方の存在が背景にあるのです。正常では心臓内の電気信号は、ある決まった通路を、決まった速度でしか伝わっていきません。そして一度電気信号が通過すると、しばらく時間がたたないと刺激はすぐ後にそこを通過することができません。つまり、電気信号を再度通すには、少し休憩が必要なのです。
しかし、この病気の時は別の新しいバイパス通路が電気信号を通すようになります。そして、このバイパス通路では電気信号はいつもより早く流れ、また刺激が来ると休憩なしにすぐに刺激を伝えてしまいます。従って、この病気の時には、いつもより早く電気刺激が伝わりますし、さらに悪いことには、伝わった刺激がまた元に戻ってきて、すぐに同じ通路を通っていくことが起こります。そのために、刺激が同じ場所をぐるぐると回転するように何回も通過します。それで早い心臓の動きがしばらく続いてしまうのです。
・動悸と頻脈の症状
日常良く経験することですが,大勢の人前で話すとき,ひどく怒っているとき,何かに不安を持っているとき,興奮した時などは心臓が高鳴り、ドキドキしてなかなか止まらないものです。しかし,これは病気ではありません。
潜在的な心理の底にあなたが気づいていない何かの不安要因があって,その不安要因が原因となって無意識のうちに心臓が高鳴っている場合があります。その場合あなたは心臓病ではないのですが,あなたにはその理由が分からないので自分は病気だと思いこんでいるかもしれません。そんな時あなたの心臓のドキドキの症状が心臓の普通の反応なのか,それとも心臓病の病的な異常な反応なのかはそう簡単に結論が出せません。
この違いを医学的に区別するには,症状が出ているときに心電図を記録し、心臓の動きの記録を残すことが必要です。心電図を見ればこの正常と病気の違いがだいたい判断できます。
・血圧の低下
心臓病によって突然心臓の動きが120回以上にも跳ね上がりますと,血圧が下がることがあります。
血圧は心臓の動く回数と同じ様に個人差はありますが,普通はある一定の値になるよう自律神経によってよく調節されているのです。正常では120程度です。単位はmmHgと言って水銀の柱の高さで表します。
血圧が正常の120mmHgから80mmHg程度にまで落ちますと,脳に行く血液量が減ってくるために意識が低下してフラーッとします。いわゆる”脳貧血”の状態です。立っているのがつらくなってしゃがみ込みます。目が回るように感じるかも知れません。気分も悪くなり,軽い吐き気も出てくるかも知れません。
このように心臓の動きの回数が突然に二倍にも増え,血圧も下がりますと,心臓そのものの筋肉にも影響が表れて,あたかも狭心症と言う病気になった時のように胸が圧迫される,締めつけられる感じも表れます。肺にまで影響が及び,息苦しさも出てくるようになり,「このまま死んでしまうのではないだろうか」という強い不安感におそわれるかも知れません。
これは頻脈性不整脈の比較的強い症状であり,同じ病気でも無症状か軽い症状しか示さない方もたくさんいます。病気とは同じことが起こっていても,どのような症状となるかは個人差が非常に大きいのです。
またこの病気の時には尿を出すホルモン(心房性利尿ホルモン)が心臓で作られ分泌され始めることが多く,さかんにトイレに行きたくなります。そしてトイレに行く度に大量の尿が出ることになります。