胃バリウム検査と胃カメラ検査の違い
最近は、検診でもバリウム検査でなく最初から胃カメラ検査を選択できる病院が増えてきました。
胃のバリウム検査は胃カメラ検査にくらべて患者さんの負担が少ない検査であるため、これまでの検診では上部消化管の検査では最初にされる検査でした。
バリウム検査では、バリウムの流れや形、粘膜の不整形やひきつれなどを観察しますが、小さい変化であれば良性か悪性かの判断が難しい場合があります。バリウム検査で少しでも異常を感じたら精密に検査できる胃カメラ検査が勧められます。
しかし、バリウム検査で問題が見つかり、改めて胃カメラ検査をお勧めしても、再び病院に訪れずにそのまま放っておかれる患者さんが少なくありません。多くの場合は胃炎や潰瘍などであまり大きな問題ではないのですが中には早期癌などが隠れている場合があります。
またバリウム検査は特性上全ての病変を拾いきれないので、見落としもあります。やはり直接目で粘膜を確認できる胃カメラ検査よりも、検査の質としてはどうしても劣ってしまうのです。
あなたが胃カメラをする上でリスクが何もないのならば、最初から胃カメラ検査を選択するのがお勧めです。ただし高齢者はお元気であっても、実際は胃の粘膜が弱く脆くなっており出血や傷つきやすいため、注意が必要です。もっとも高齢者の方で、何も症状がないのに単なる検診のために生まれて初めて胃カメラを受けるという方はあまりおられません。むしろ何か症状があり、そのために胃カメラ検査を必要とされることが殆どです。その場合は主治医と相談して、必要なら胃カメラ検査で病気の有無を確認する、あるいは病気の経過観察をしていく必要があるでしょう。
胃カメラを、上手に飲み込むコツ
胃カメラ検査を患者さんが避けたがる理由としては、やはり苦しいことが一番でしょう。
1)喉元(のどもと)の苦しさを和らげる
齢と共に鈍くはなりますが、ファイバースコープが喉を通る時に、健康な若い方では正常な嘔吐反射(ゲーと吐く)が出てかなり辛いでしょう。胃のなかを見ているときもファイバーは観察のために絶えずあらゆる方向に動かしていますので、麻酔の効きの個人差があったり反射の強い方では、検査が終わるまで嘔吐反射が続いてしまう方がいることは確かです。
しかししっかり検査前に喉の麻酔をすることで喉元の負担は確実に軽くなります。またファイバースコープに麻酔ゼリーやオイルを塗りますので喉元の違和感は検査中に徐々に和らいできます。緊張せずに身体の力を抜いて落ち着いて身を委ねることが大切です。
2)げっぷを我慢する
胃カメラ検査では、胃の中に空気をたくさん入れて胃を膨らませるため、どうしてもお腹の張り感が出てげっぷをしたくなります。しかし検査中にげっぷを何度も繰り返しますと、空気の入れ直しとなり、検査時間が長引いてしまいいっそう辛く苦しい検査になります。げっぷは、食道と胃のつなぎ目が緩んでいる場合(食道裂孔ヘルニア)で特に出やすく止めることもなかなか難しいですが、基本的にはげっぷが出そうになったときは、息を止めることで防ぐ効果があります。げっぷを我慢することは検査中に患者さんに協力して頂きたい大切な項目です。
3)リラックスする
目が覚めていると、検査の緊張で喉元が締まって検査がさらに辛くなります。できるだけ首と肩の力を抜いて、ゆっくり鼻で吸って、ゆっくり口から吐く深い呼吸を繰り返します。喉元にスコープの先端が来たらそこでゴクンと飲み込むとスムーズな挿入を助けます。
4)経鼻カメラを使うことも考慮する
口からの胃カメラがどうしても苦しいという方は細いファイバースコープの鼻からのカメラを選択するのもよいでしょう。
しかし、この検査法にはいくつかの問題点があります。
A) 鼻炎が強い人や鼻腔が狭い患者さんでは鼻が痛くなったり出血したり、うまく挿入できない場合もあります。この場合鼻からのスコープを口から入れるというのもひとつの方法です。
B) 経鼻スコープは経口スコープに比べて、ファイバーの太さが細いために視野が悪かったり、腰が弱いので胃の中での操作に難点があり、経鼻スコープが使えない場合もあります。従って症例によっては患者さんが希望されても、主治医の判断で経口スコープを選択する場合があります。
C) 前夜から絶食しても、胃の中には多少なりとも胃液や食べ物のカスが残っています。多いときには検査時間の1/3以上をかけてこれを掃除してから検査の観察が始まります。鼻用の細いスコープでは経口のスコープと比べて吸引にだいぶ時間がかかりますので、経鼻カメラではこれが苦痛と感じる人もいるでしょう。
5)胃のなかを完全に空にすること
前夜よりきちんと絶食し前日は消化のよい食事を心掛け、胃のなかを綺麗にしておくことが検査の負担を軽くする大切なコツです。それでも消化が悪く残りカスが多くある患者さんには、前日昼から絶食をお勧めしています。
6)リラックスする薬を、事前に飲むか注射する
緊張が強い方なら、鎮静剤の注射で眠らせて検査をする病院を選ぶとよいかもしれません。あるいは安定剤を事前に内服しておくのも緊張を取るためには確実に効果があります。
ただし眠たくなるお薬を使った場合、その日は安全のために車の運転や飲酒をしないでいただくことになるので、交通の手段の確保やイベント事の注意が必要です。
これらの問題が解決されれば胃カメラ検査はだいぶ楽に受けられるでしょう。できるだけ苦しくなく安全な胃カメラの検査で、胃、食道、腸の病気の早期発見・早期治療をして健康を維持して下さい。