間違えるパターン
血圧の薬は毎日飲み続けることになります。飲み方は様々です。朝だけ、朝と夜、朝と寝る前の一日二回、朝と昼と夜の三回などです。
一番多いのは朝だけ一回でしょう。簡単ですから間違えにくいですが、たまに朝飲んだことを忘れてしまって、しばらくしてもう一度飲んでしまう場合です。この飲み間違いが一番多いと思います。
特に高齢者では脳機能低下や認知症などがあって、飲んだことを忘れやすくなっている人が多いでしょう。
注意は2つ
二度目を飲んでから間違ったことに気付き慌ててしまいます。血圧の薬(降圧剤)には効き方の分類が数種類あります。飲み間違えた時の対応はどの薬でも全く同じではありませんが、主な注意点は2つです。
どの薬かに関係なく対応の共通点は、まず間違って飲んで15分後くらいから6時間くらいの間、家庭血圧計で定期的に血圧と脈を測定し記録して下さい。その変化を観察します。
その時の注意点の第一は、どの分類の薬にも共通ですが、血圧が下がり過ぎることからくる問題です。第二は脈が遅くなりすぎることの問題です。もし2倍飲んだとしても、それ以外に特別大きな問題はほぼ起こらないと予想します。特にその二点に注目して観察して下さい。
1)血圧の下がり過ぎ
間違えて降圧剤を2倍量飲んだわけですから、薬が効きすぎて血圧が下がり過ぎる場合は十分にあります。正しい量の内服で血圧は120/75mmHgであったなら、間違ったのが強力な降圧剤の場合なら2倍量飲めば100/65mmHg程度以下まで下がるかも知れません。
それ以上に下がるかも知れません。しかし皆さんが想像するほどには大きく下がらないものです。ですから降圧薬を間違えて2倍量飲んでも実際には何も起こらないほうが多いと思います。
もともと血圧が少し高めにコントロールされている患者なら、2倍量飲んで丁度良い程度の血圧になっているかも知れません。しかしこの前提は間違えて一回だけ2倍量飲んだことを想定したお話しですから、倍量を毎日続けたときの話ではありません。
もともと100/60mmHg程度にまでかなり低く血圧がコントロールされている患者では、2倍量飲むと85/56mmHg位まで下がり低血圧の症状が出るかもしれません。
その低血圧の症状とは、体がだるい、ボーとする、眠くなる、立ちくらみが起こる、めまいがする、元気がなくなるなどです。いつもの薬の2倍量程度なら脳梗塞や心筋梗塞などの危険な症状にまで発展する事態はまず起こらないでしょう。
低血圧の症状が出たら、しばらく横になったり、水を多めに飲んだりして休んでいるのが良いと思います。血圧は間もなく戻りますから症状は消えます。長くて数時間程度の我慢でしょう。あまり慌てなくて大丈夫です。もし何の症状もなければ普通に生活して大丈夫です。
2)脈が少なく(遅く)なる
もう一つ重要な点は、2倍量飲んだのがベータ遮断薬系の薬である場合です。薬の名前としては、アーチスト、メインテート、ロプレソール、セロケン、テノーミン、インデラル等です。
この薬はもともと心臓の動きを抑えますので脈が少なくなっています。いつも飲んでいる量で脈はある程度抑えられていますが、間違えて2倍飲むとさらに脈が遅くなります。
遅くなる程度はその人の体質によりますから簡単に予想できませんが、普通で脈が1分間60であれば、2倍飲むと1分間に50前後くらいに遅くなるかも知れません。しかし高齢で薬の反応が良い場合なら40以下にまでなって危険な症状が出ることもあります。
その症状は、ボーとする、意識が薄れる、気が遠くなる、意識を失う、非常に疲れ易くなるなどです。こんな症状が出る場合は危険です。病院に行きましょう。
どの薬も間違って飲んで15分ほどたってから効き始めますから、その以後に定期的に血圧や脈を計ってください。家庭の自動血圧計で測れば血圧と脈が同時に測れますので好都合です。脈が1分間に50以上あれば問題ありません。40台後半になっていたら注意してください。40代前半にまで遅くなったら症状がなくても病院に行くと良いでしょう。