風邪が万病の元か?
故事ことわざ辞典によれば、【風邪は万病の元】とは、風邪はあらゆる病気の元になるからあなどってはいけないという戒め。また風邪はあらゆる病気を引き起こす原因になるから用心が必要であるということ。たかが風邪と甘く考えないように戒める言葉。【風邪は百病の長】と言う諺もあるそうです。
風邪=ウイルスや細菌の急性上気道炎には確かにそのような側面がないとは言いませんが、一般的には風邪をこじらせても万病になる可能性はかなり低く、病気としての風邪の重症度を過大に評価していてこの諺の正しく解釈ではないように感じます。
ただ風邪のウイルスや細菌の感染から他の臓器が障害され重い別の病気になる可能性はありますから万病の元の側面もあります。原因がウイルス感染症であった病気が最近見つかっていますから風邪はいくつかの病気(万病かどうかは不明)の原因である可能性があります。しかし大多数の風邪のウイルス感染症はそれだけで終わってしまうのが普通です。
私はこの諺を少し違った角度から解釈してもよさそうだと感じていました。正しいか間違いかは別にして、こんな解釈の視点もあると言うことをお話してみます。
風邪の症状とは?
まず「風邪」の症状ですが、風邪とは一般的には急性上気道炎のことです。しかし多くの患者を診察していますと、患者の考える「風邪」の症状の認識はそのようなものではないようです。
暗黙に了解している「風邪」とは全身状態はさほど悪くないが「何となくだるい感じ」が或る期間続けば「風邪」とするようです。
熱はあるか、ノドが痛いか、鼻水は出るか、咳はあるか。それらが揃っていれば「急性上気道炎=風邪」であろうと医学的には想像します。
しかし「何となくだるい感じ」にお腹が少し痛く下痢気味であっても「風邪」、「何となくだるい感じ」に食欲がなく吐き気があっても「風邪」、「何となくだるい感じ」に歩くと息切れや疲労感が続いても「風邪」など、「何となくだるい感じ」があって全身状態がそれほど悪くなければそれは全て「風邪」だと思ってしまうようです。医学的にそれは風邪ではなく別の病気と診断します。
風邪とは「何となくだるい感じ」?
医学的な風邪の診断とは別に、一般的に考えられる「風邪」の実態とはそのようなものですから、この「何となくだるい感じ」を「風邪」と言うのであれば「風邪」は非常に多くの病気の可能性があるのは正しい見方です。
「何となくだるい感じ」の症状であれば、本物の風邪(=急性上気道炎)の場合はもちろんですが、胃腸炎、胃潰瘍、肺炎、気管支炎、貧血、結核、癌、肝臓病、ホルモン異常、腎臓病、心臓病など相当多くの病気の可能性が含まれます。
すなわち「何となくだるい感じ」=「風邪」と解釈すればこれはまさに「風邪は万病の元」になるわけです。