「脂肪肝」は少し太め程度ではなく、「生活習慣病」のレベル
アルコールを飲まないのに、ドックや検診で「脂肪肝」と指摘された方は多いと思います。しかしこれは無症状ですから、「少し太り気味ですね」と言われた程度の自覚しかない方がほとんどだと思います。事はそんな穏やかではないことが最近分かってきました。
肥満が社会問題化している欧米では、高度の脂肪肝は、肝炎、肝硬変、肝癌に至る「非アルコール性脂肪性肝炎」の前段階として注目されていました。飽食と肥満の現代日本でも同じ現象が起こっています。非アルコール性脂肪性肝炎は脂肪肝を準備状態とするため、脂肪肝をただの良性の状態として見過ごしてはいけないとするのが現在の世界の医学界の潮流です。
「脂肪肝」や「非アルコール性脂肪性肝炎」になりやすい人
アルコールの大酒家、肥満、糖尿病のある方が脂肪肝になりやすいことが分かっています。アルコールを飲まなくても、肥満や糖尿病が長期にわたって持続しますと、この脂肪肝が非アルコール性脂肪性肝炎へと進行悪化していくようです。非アルコール性脂肪性肝炎は慢性の肝障害ですが、これまでは無症状で病気はほとんど進行しないと考えられてきました。しかし最近、研究が進み肝硬変や肝癌になってしまう患者さんがいることが分かってきました。
大酒家で重い肝臓病や肝癌になることは昔からわかっていましたが、(→◆091 「酒は百薬の長?」 それには条件あり)アルコールを全く飲まないただの肥満の人の脂肪肝でも、大酒家と同じように将来肝癌に至るコースがあることが注目されています。日本ではすでに100万人近くが既に非アルコール性脂肪性肝炎になっていると予想され、飽食と肥満の時代の生活習慣病、肝臓病として注目されています。
日本での患者数
この非アルコール性脂肪性肝炎の患者は、現代の肥満日本人では、ドックや検診を受ける年代の男性は30~40%が、女性は10~20%程度がそうであると予想されています。肥満、高中性脂肪血症、高血糖、高コレステロール血症を高率に伴っています。
病気を調べる検査
血液検査とCTや腹部超音波検査と合わせて検査して病気を確定します。場合によっては外から針を刺して肝臓の一部を取ってくる肝生検が必要になることもあります。
血液検査としては、AST(GOT) 31, ALT(GPT) 31, γ-GTP 51以上なら肝機能異常で注意が必要、AST(GOT) 51, ALT(GPT) 51, γ-GTP 101以上なら医療機関を受診するべきレベルとされています。(特定健診の受診勧奨判定値より)
生活改善と治療
脂肪肝レベルやまだ軽い非アルコール性脂肪性肝炎レベルの方なら、その原因(肥満や糖尿病)を制限すれば病気は改善できます。痩せること、コレステロールや中性脂肪、糖尿病のデータを良くすることです。間食は避け、低カロリーでバランスの良い食事とし、適度な運動を心がけ、肥満を解消することです。→若々しい健康づくり
→◆032 痩せるが一番! 日本人は痩せて健康な民族?
→◆076 健全な痩せ方 脂肪を減らし、筋肉・骨は増強を
この病気には自覚症状は何もありません。検査を繰り返しながらデータが良くなるのを確認しながら治療を進めることです。理想体重(BMI=22)を目標に、食事療法と運動療法を行って、月に1Kg~2Kgの体重の減量を実現しましょう。
当院の経験
当院のような小さなクリニックでさえ、肥満の脂肪肝から、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、肝癌へと進んでしまった方やその候補者がおられます。何年にもわたり痩せるよう繰り返し指導し治療してきたのですが、ついに体重減量が実現できず残念な結果になりました。
相当の肥満があり、明らかな脂肪肝や肝障害データを合併している方は、決して他人事ではないと、覚悟して体重減量に真剣に取り組んでください。肥満だけで命を落とすことがあるのです。