不整脈は症状と病気の軽重が一致しない
不整脈は種類が非常に多い病気です。そして病気で治療が全く違います。また症状も非常に多彩で不整脈の病名の確定(診断)が大変難しい場合があります。
症状の軽重と病気の軽重が一致しないのもこの病気の特徴です。症状が軽いので様子を見ると致命的な結果になってしまうこともあるのです。
多くは軽い心臓病
そのような背景から、心臓病の中でも不整脈はとりわけ診断と治療が高度に専門的な分野です。しかし日常多くの患者さんが悩まされる不整脈の大多数は不整脈の専門医に診断治療をしてもらわなければならないような重大なものではありません。
当院のような小さなクリニックで不整脈専門医ではない私のような循環器内科医でも多くの不整脈は対応が可能です。もちろん私が自分の知識と経験から手に負えないと判断する患者はすぐ不整脈専門医に紹介します。そんなケースは当院では年間で数人以内だと思います。
よくある不整脈
今日はその不整脈の治療についてお話しします。もちろん年間に数人しか出会わないような病気には触れず、当クリニック外来でよく出会うありふれた不整脈に限定します。皆さんが良く遭遇する不整脈もその多くは恐らくこのような不整脈だと思われます。
■単発で一回完結の「ドキッ」だけ・・
・上室性期外収縮・心室性期外収縮?
それは上室性期外収縮か心室性期外収縮の可能性が高いと思われます。
→◆心臓病 「一瞬、ドキン(ドキッ)!」 これはどんな病気?
・多くはストレスが原因
普段から心臓に問題のない健康な人なら、この期外収縮は何かのストレスが誘因である場合がほとんどです。そのストレスとは人により様々で、仕事、人間関係、失恋、嫁姑関係、病気の不安、経済問題などなど多彩です。
患者の症状やその背景を詳しく聞き、全身を診察した後に、心電図、胸部レントゲン写真、血液検査、尿検査、時には心エコー検査をします。
・抗不整脈薬は極力避ける
多くの人は検査で大きな心臓の異常は見つからず、特別な薬の治療も必要ないことが多いでしょう。しかし症状の原因となる背景の事情(たとえば上司との人間関係)が比較的深刻で患者自身が薬で何とか原因のストレスや不整脈を抑え込みたい希望が強い場合は薬の内服が始まります。
この時の薬は不整脈そのものの薬というより、不安を抑え込む薬や緊張する自律神経の興奮を抑えるような薬が選択されます。こんなケースは心臓そのものに重大な病気があるわけではないので心臓に直接作用するような強い抗不整脈薬は極力避けます。
そのような強い抗不整脈薬は過量投与になると重大な副作用が出る恐れがあるからです。→◆心臓病の薬 意外な副作用は「薬の過剰効果」
・多くは「病は気から・・」のような病気
多くの患者は薬を出さなくても診察が終わって帰るころにはホッと安心して、病院を出る頃にはすっかり不整脈が消えることがあります。
数年もたって再び何かで当院を受診した時に古いカルテを見て「あの時の不整脈はどうでしたか?」と伺うと、「お蔭様であの日以来ほとんど気にならなくなりました」と答えてくれることが多いと感じます。
診察で安心して病気が治ってしまったのです。この不整脈は一種の「病は気から・・」のような病気です。
・問題のある期外収縮は?
放置してはいけない期外収縮が少数ですが中に紛れ込んでいます。こんな人については以下にまとめました。
→◆心臓病 「一瞬、ドキン!」 これはどんな病気?-精検ケースー
→◆心臓病■02 一瞬の異常(期外収縮)
■ドキドキ(頻脈)が続く、失神、めまいなら・・・
・心房細動、上室性頻拍症、洞不全症候群etc?
ドキドキが続く、頻脈発作、失神、めまいなどの症状の場合は、上の期外収縮より患者数はずっと少なくなりますが、期外収縮のケースとは不整脈の病態も治療もかなり様相が異なってきます。
→◆心臓病 「急にドキドキして、しばらく続く」 これはどんな病気?
静かにしている時に急に心臓がドキドキと速く動き気分が悪くなった。収まるまでしばらく時間がかかった。
前触れもなく急に一瞬気を失ったり(失神)、気を失いそうになったり(めまい)した場合、その原因が心臓の不整脈のことがあります。
この場合は、24時間心電図(ホルター心電図)を中心に詳しい心臓の検査を一通りしていただく必要があります。その日だけでなく何回か来院して頂き検査します。
・心臓病が原因なら治療
その検査の結果、原因が心臓の不整脈であると確定すれば、当院で治療ができる場合とできない場合がありますので病状をお話しします。
患者と相談のうえ今後の方針を決めます。まず治療を開始することになります。病気の程度によりますが、治療せずにそのままで様子を見る可能性は少ないと思います。
ドキドキなら →◆心臓病■03 速い脈(頻脈)
失神やめまいなら →◆心臓病■04 気を失う(徐脈ほか)
■自己診断は危険
不整脈で病院を受診して診察を受ける状況を簡単にお話ししました。不整脈があれば一度は医療機関を受診し専門医の診察を受けておきましょう。
心臓病についてどんなに詳しい知識があろうと、素人が不整脈の症状を病院に行かず自己判断するのは、リスクを伴って非常に危険であると思って下さい。面倒でも必ず一度は専門医を受診してください。問題なければ「よかった!」と考えればよいのです。
この問題は心臓病全般に言える大切なことです。自己判断で放置して命を失った人を実際に経験しました。
続く・・・
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