薬治療に拒否反応する
高血圧、高コレステロール、糖尿病、肥満などで当院に通院しておられる患者で、高血圧は薬で治療しているのですが、それ以外の病気は薬に頼りたくないとして「まだ薬は飲みません。もう少し自分で生活を立て直しデータをよくしますから、あとしばらく頑張らせてください」と検査結果が悪い値から変わらなくても薬を飲むアドバイスを長く否定し続ける人が、極く珍しいですが、います。
数ヵ月おきに定期的な血液・尿検査をしますが、その結果では特別な変化はなく(生活にも特別な変化はない?)「検査データを改善する必要があります。薬を飲むか、飲まないならダイエットや運動をもっとしっかりやって、良い結果を出さないといけません」と繰り返し繰り返しお話しすることになります。
しかし、薬は飲まず必要な生活改善も十分に達成できず、従って検査データも変わらず悪いままズルズルと5~10年続いてしまいました。その10年間に体内では血管の変化が確実に進行しているはずです。治療せずに過ごして失われた10年となってしまいました。
生活改善だけでは困難と覚悟する必要がある
生活を改善して良い検査データにしようとする意志と意欲はあったとしても、結果が出ずに結局10年間も悪いデータのままなら、10年間は何も対応しなかったのと実質は同じことになります。生活改善が自分には無理だとどこかの時点で諦めて薬の内服治療を開始することが大切です。
しかし、そのように行動しない人は私たちの度重なる(執拗なほどの)説得にもかかわらずその決断をなかなかなせずに時間が過ぎていくようです。大変残念ですが、このように悪いデータを続けながらそれでも10年間も生活改善でと繰り返す人は、薬の治療によほど強い抵抗があるのか、医師の言う「悪いデータ」が実際は体にそれほど悪くないと何かの理由で確信しているのでしょう。薬に切り換える必要を感じないのだと想います。
不思議なことは高血圧の薬剤治療はしているのに、糖尿病(または高コレステロール)の薬剤治療にはこだわります。病気によって薬を飲む飲まないを区別していることです。なぜこの重大な病気に治療するしないの区別をつけるのか私にはなかなか理解できません。
結果的に、重大な病気を無治療で放置してしまうことになります。長い間、定期的に診察していながら説得できず、患者の病気を治療してあげられなかった私たち医師の責任を痛感します。患者個人の意思を尊重することも医療では大切なのでその兼ね合いが難しい問題です。
糖尿病や高脂血症では薬の治療に抵抗がある?
糖尿病や高コレステロールでは薬を飲んで病的データを改善するのが何か悪いことのように思っているのでしょうか?または意味がないと思っているのでしょうか?
体の病的な状態がありそれがたとえ悪い食生活や運動不足の習慣から来たものであっても薬を使ってその病的状態を直し健全な状態に戻すことは意味のあることです。
薬を使い薬の力を借りて体を健康に改善できるなら、それが問題ある薬でない限り、積極的に薬を使う方が良いと考えます。
薬で早期からの治療を勧める
現代は幸いに昔と違い、本当に良い薬がたくさんあります。薬を使えば相当多くの病気が克服できるようになった時代です。この幸運なチャンスをフルに活用すべきだと思います。
薬に対して様々な意見や考えがあることは知っています。しかし高血圧、糖尿病、高コレステロールの治療薬には特別な問題は少ないと思います。多面的な情報から薬の本当の価値を判断して頂きたいと思います。
薬を効果的に活用し健全な体を造り病気を予防し何時までも健康に生活できるようにしてください。私たちにはそんな実例が数多くあります。
このコラムも参考になると思います。→「コレステロールが高い」 治療すべきか否か