健康はまず痩せることから
長く内科診療を続けてきて日頃感じている女性特有の現象についてお話ししてみたいと思います。病気の話ではありませんが大変興味ある事だと思います。
私たちのクリニックでは患者が痩せることを非常に重要視しています。日本の現代社会では太り過ぎが大きな健康問題となって、健康にはまず太った体を痩せることから始めるのが最も大切だと考えます。毎日の診療のなかで太めの人には繰り返し体重の話題で痩せるよう説明を続けています。
そんな背景から、皆さん良く努力なさり確実に痩せて下さる人もたくさんいます。残念ながら十分な成果を上げられない人もまたたくさんいます。どちらの人が多いか調査したことはありませんが当院の患者全体の平均値としては体重減少の方向に動いていると感じています。
肥満から目標へ減量できる女性は極く少数
長年の経験で個人的に強く感じていることですが、太った人(BMI>25)が目標体重まで数か月で減量する場合、実現できる男性は時々いますが、女性は本当に少なく珍しいことです。
多くの人にとり体重減量は大変厳しいのが現実です。しかし太った人が目標体重までかなり早い期間で減量できた場合、男性ではそこそこの割合で経験します。
一方、太った女性では男性のように目標まで減量できる人が極端に少ないことです。目標値どころかほんの数キロでさえ減量できない人が多いことです。
子供時代から太っていた人は別にして20歳まではBMIが22以下の体格であったのに、20歳台半ばから太り始め中年ではBMIが25以上になってしまった人は普通でしょう。
もちろん本人もそれは自覚していて減量しなければいけないと本気で考えています。20歳頃の体格になりたい、なれればいいと真剣に思ってはいるのです。私たちも痩せることの重要性は耳にタコほど繰り返し話しています。そんな環境にいながら太った女性には数キロの体重減少が困難なのです。
太った女性が減量できない理由
どうしてでしょうか。年齢、学歴、職業、経済環境、住宅環境、家庭環境、未婚・既婚、子供あるなし等にはどうも無関係のようです。どんな条件もあまりその現象を上手に説明できそうにありません。理由をいろいろ考えたことがあるのですがどうも分かりません。なぜ女性は男性に較べ減量できないのか。
性差でこんな大きな違いがあることはそう多くありません。病気ではなく痩せる・痩せられない、この問題には明確な男女差があると思っています。
詳しく調べれば世界のどこかにそんなテーマを調査研究した論文があるかもしれませんが私はまだそんな論文を見たことがありません。
食欲本能が亢進にセットされている?
これから先は私の推測です。一つのアイデアだと思ってお聞きください。男性に較べ太った女性が痩せられない理由は女性の食欲本能亢進のためではないかと想像しています。
女性には妊娠、出産、授乳、育児があります。妊娠中、出産時はもとより、授乳中も長期にわたり子供に栄養を与えなければなりません。この妊娠・授乳の長い期間中は女性にとって必要な栄養補給はまさに母子の死活の問題です。
必要な栄養量はそうでない時の1.3倍ほどでしょうか。そんな背景から特に妊娠可能年齢では男性に較べ食欲中枢が亢進状態にあって、出来るだけ多くの栄養を貯蔵するよう脳からの指令で無意識に行動させられているのかもしれません。
生まれつき食べるの大好き食べたくて仕方ないように仕組まれているのでしょうか。高カロリー・高タンパクの食品ほど女性の食欲をそそるのでしょうか。
痩せた時は背景にストレスや問題がある?
健康のため痩せなければいけないのは理性です。食欲本能の強力な駆動力は食べる方向に向いてますので、理性だけではとてもこの強い本能を抑えることはできません。減量は無理かもしれません。自分の生命と子の誕生、生育にかかわる女性の本能の駆動力は極めて強力なのでしょう。
どんな理由であっても、ある年齢の女性に食欲を抑えて痩せるのは全く無理な要求なのかもしれません。もし痩せられたなら何か重大な問題があった時かもしれません。
つまり太ってしまった女性が痩せたということは、食欲を減退させるストレスや問題が起こった時だといえます。それが病的か否かは別問題です。または痩せたい痩せなければならない特別に強い動機が起こったり背後に何か病気が潜んでいるからかもしれません。
食欲本能は強力な駆動装置、減量はこれを克服
一方、男性はその点で気楽なものです。痩せなければ健康が損なわれるとなれば、その理由だけで食欲本能を抑え込むことが比較的易しく実行できるのでしょう。しかしそうはいっても男性にとっても食欲は最強の本能的欲望ですから、そうたやすく食欲を抑制できるものではありません。しかし女性の置かれた環境に較べれば、欲望のレベルははるかに低いと考えても良いかも知れません。
「太ってしまった女性は減量できない場合が多い」。この現象の私なりの理由づけでした。勝手な推測です。明快な医学的根拠はありません
一方、スリム体型維持(BMI<23)は女性が勝る
一方、スリム体型で体重を基準状態に維持(BMI<23)することでは男性より女性の方が実現比率が高いと思います。この点では女性が男性より優れていると感じます。
中年以後では意識しないと自然に体重が増加し肥満になりますから、健康意識が高くないとつい肥満になってしまいます。中年以後では多くが肥満となる理由だと思います。
この自然の状態で比較すると、女性の方が肥満にならず健康なスリム体型を維持している比率が男性より多いように感じます。あくまで私の個人的な印象でどこかの統計を見たわけではありませんので正確ではありません。
もしそうだとすれば女性の方が中年以後に肥満にならず健康なスリム体型を維持する意欲が男性より高いことになります。その理由は女性の方がより高い健康意識やより高い美意識がありその点で男性に勝るからかも知れません。
以下の「特集」も参考になると思います。