患者さんへの助言
検診やドックを受けた時、心電図異常が指摘されることが良くあります。報告書の心電図所見を読んでも何のことかほとんどわからないでしょう。この後で専門医に相談するでしょうが、その前に予備知識として少しは知っていた方が良いと思う方はここをお読みください。ここを読んで納得して、専門医受診を中止するようなことはしないで下さい。
心配な時は医師に相談ください。
◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
洞性不整脈
軽い脈の乱れです。自覚する症状は何もありません。ほぼ心配ありません。
洞性徐脈
心臓の動きが遅い所見です。軽ければ自覚症状はありません。
病気が重くなると意識を失う失神発作になります。心臓拍動の遅さの程度によりますが、程度によっては追加の検査が必要です。
詳しくはここをお読みください。 症状からわかる心臓病■04 気を失う(徐脈ほか)
洞性頻脈
心臓の動きが速い所見です。軽ければ自覚症状はありません。
普通は心電図検査で緊張したためにおこります。あまり問題になりません。
しかし緊張したのでなければ、心臓や全身に何か隠れた病気がある場合があります。心臓拍動の速さの程度によりますが、程度によっては追加の検査が必要です。
詳しくはここをお読みください。 症状からわかる心臓病■03 速い脈(頻脈)
◆141 頻脈?:安静で80台以上が長く続く時は注意
1度房室ブロック
心臓時計(洞結節)から出た電気信号が心臓の中の配線経路を流れてゆく途中にある中継地点(房室結節)での異常です。
軽い異常です。自覚する症状はなにもありません。しかし今後の経過を観察する必要があります。
2度房室ブロック
1度房室ブロックと同じく、これも心臓時計(洞結節)から出た電気信号が心臓内の配線経路を流れてゆく途中にある中継地点(房室結節)の異常です。
これには軽い異常(ヴエンケバッハ・タイプ)と中程度の異常(モビッツ・タイプ)の二種類があります。軽い異常なら自覚する症状はありません。
中程度になりますと、めまいや失神をおこす場合が稀にあります。さらに病気が進行しますと、3度(完全)房室ブロックとなり直ちに治療が必要になります。病状によって追加の検査が必要です。
ST低下、ST上昇、ST-T異常、異常Q波、陰性T波、異常T波、冠不全など
心臓の中で最も重要な部分である左心室の筋肉で何か異常が起っている可能性が疑われます。
精密検査の結果、異常なしの可能性も十分ありますから過度に心配する必要はありません。
しかし狭心症や心筋梗塞などさまざまな心臓病の可能性もあります。専門医できちんと検査を受けて正確な心臓の状態を調べましょう。
上室性期外収縮
よく見られる異常所見です。心臓の中の一部の部屋でおこった電気的な異常から誘発された心臓の異常な収縮です。
自覚症状はある方とない方がいますが、その症状についてはここをお読みください。 ◆097 心臓病 「一瞬、ドキン (ドキッ)!」 これはどんな病気?
普通は軽い異常ですが、症状の程度によっては治療が必要です。
詳しくは以下をお読みください。 特集:不整脈、期外収縮と心房細動
心室性期外収縮
よく見られる異常所見です。心臓の中の心室という部屋でおこった電気的な異常から誘発された心臓の異常な収縮です。上室性期外収縮よりもより注意が必要です。
自覚症状はある方とない方がいます。その症状についてはここをお読みください。 ◆097 心臓病 「一瞬、ドキン (ドキッ)!」 これはどんな病気?、
普通ならあまり問題ありませんが、程度が重ければ治療が必要です。注意して治療が必要な場合とは・・・ ◆099 心臓病 「一瞬、ドキン!」 これはどんな病気? -精検ケースー
詳しくは以下もお読みください。 特集:不整脈、期外収縮と心房細動
左室肥大、左室高電位、心肥大
心臓の中で最も重要な部分である左心室の筋肉が厚くなっていることが疑われる所見です。
この所見は主に長年の高血圧が原因で起こった心臓の異常です。これが出るようなら、かなりの期間かなりの程度の高血圧が持続してきた可能性が高いと思われます。
高血圧によって既に心臓はダメージを受けてしまっていますので適切な治療を始めるべきです。
しかし高血圧以外にも、「異常なし」を含めて原因でいろんな病気があります。専門医に診てもらいましょう。 ◆157 心肥大や心拡大は、心臓病になった可能性
完全右脚ブロック、不完全右脚ブロック
心臓時計(洞結節)から出た電気信号が心臓内を流れてゆきます。心臓内の左と右の配線のうち,右側の経路(右脚)が断線している所見です。
これ単独なら軽い異常のことが多いでしょう。しかし重い病気が背景に隠れていることがありますから調べておきましょう。
左脚ブロック、左脚前枝ブロック
心臓時計(洞結節)から出た電気信号が心臓内を流れてゆきます。心臓内の左と右の配線のうち,左側の経路(左脚)が断線している所見です。
この配線は普通は非常に頑丈で滅多に断線しません。切れてしまっているとすれば,何か重大な問題が心臓に起こった可能性があります。専門医に診てもらいましょう。注意が必要です。
進行すると、めまいや失神発作が起こりますので危険です。 症状からわかる心臓病■04 気を失う(徐脈ほか)
心房細動
この病気は定期検診する年代(20歳代から60歳くらいまで)では普通は現れません。もっと高齢になってから急増してきます。従って検診で発見されれば必ず精密検査が必要です。
心臓の心房という名前の部屋の筋肉を,電気信号がメチャクチャに走り回る状態です。
心臓病としてはそれほど重い病気ではありませんが、突然これがおこると,不快な動悸を感じることが多いのです。症状の程度は人によって様々です。
この病気は無治療のまま長期間放置しますと心不全となっていきます。
この不整脈では、心臓内に血液の固まり(血栓)が出来やすくなります。もし血栓ができて血液循環を流れて脳まで行き、そこで血管を詰まらせると重い脳卒中になります。非常に重症な脳塞栓になりますから、この予防対策をする必要があります。これがこの病気では最も重要な治療の一つです。 ◆200 心房細動 悲劇を作らないために
この病気について、詳しくはここもお読みください。 特集:不整脈、期外収縮と心房細動
WPW症候群
心臓時計(洞結節)から出た電気信号が流れてゆく正常な配線経路の外に,別な配線経路もある病気です。300人に1人ほどいると予想されるそう珍しくない病気です。
これだけならそれほど重くないですが,この病気では時に心臓が異常に速く動くことがあります(上室性頻拍)。その時には症状が出ます。 ◆107 心臓病 「急にドキドキして、しばらく続く」 これはどんな病気?
この病気と心房細動が同時に組み合わさると,非常に危険な心臓の動きとなることがありますので注意が必要です。しかし、この運悪い組み合わせが起こることはあまりありません。
専門医で良く調べてもらいましょう。