症状からわかる心臓病■07
診断名:解離性大動脈瘤,感染性心内膜炎,心膜炎,心筋炎
ここで説明する病気はどれもそれ程多くないものです。むしろ珍く滅多にない病気も含まれます。その中で「解離性大動脈瘤」だけはそんなに珍しくありません。これは心臓の病気ではなく、大動脈という一番太い血管の病気です。多くは高齢者の老化した大動脈で起こりますが、不摂生が多いと若くして起こることもあります。有名人ではかつて石原裕次郎さんがこの病気で手術して助っています。
心配な時は心臓専門医に相談ください。→◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
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「症状のリスト」番号26の病気:解離性大動脈瘤
この病気は大動脈の病気であり,心臓の病気ではありません。大動脈という血管に突然裂け目が入る病気です。例えれば,多層構造のパイプの何番目かの層の間に裂け目が入り,その裂け目が縦に拡がっていったようなものです。
この病気は高齢者で血圧の高い方におこるのが普通です。血管に裂け目が入った最初の瞬間が最も強い激痛で,痛みは血管の割ける方向に沿って体の中を移動するのが特徴です。 割け方の程度が強かったり,割けた影響で他の臓器に重大な問題(心臓の大動脈弁閉鎖不全症,脳虚血,腎虚血など)が起こったときには,血管を人工の血管に取り替える手術が必要になります。命にかかわりますので,直ちに入院が必要です。
「症状のリスト」番号27の病気:急性心膜炎
細菌より小さいウイルスという病原体が体の中に入って,風邪のような症状を起こします。その時同時にこのウイルスが心臓を包んでいる薄い膜に付きますと,この病気になります。珍しい病気です。
胸の痛みが現れます。この痛みは狭心症の胸の圧迫感とは違います。深い呼吸をすると胸の痛みはひどくなります。座って前に屈すると痛みは楽になることが多いようです。 ニトログリセリン(狭心症の特効薬)は無効で,胸痛は数日にわたって続きますので,狭心症とは症状が違います。 炎症を抑える薬の内服で治ります。心臓を包んでいる膜との間に大量の水が貯まった時には重症となることも希にはありますが,そうでなければ比較的軽い病気です。
「症状のリスト」番号36の病気:急性心筋炎
ウイルスという病原体が体の中に入って,発熱,咳,痰,のどの痛みといった典型的な風邪のような症状を起こします。また腹痛,吐き気,下痢など消化管の症状がでることもあります。このウイルスが同時に心臓の筋肉にも付きますとこの病気になります。これも珍しい病気です。
ほとんどの方は風邪のような症状だけで治ってしまいますが,時にこのために心臓の筋肉が弱ってしまって心不全になることがあります。心不全となった方でも多くは元の元気な心臓に戻りますが,一部の方では心臓が弱ったまま回復しない時もあります。心不全になった方は入院治療が必要です。
「症状のリスト」番号37の病気:感染性心内膜炎
もともと軽い心臓弁膜症がある方で,虫歯に付いていた細菌が体の中に入り,血液の流れに乗って心臓にたどり着き,そこで心臓弁に付着し増殖して弁を破壊する病気です。抗生物質が充実した現在では、この病気もかなり珍しくなっています。
細菌が原因ですから熱がでます。多くは37~39℃台の熱が何週間も続きますので,治り難い風邪と思っていることもあるようです。体もだるく,疲れやすくなります。病院にかかっていても発見されず、風邪として治療されて長引くことが多いです。運良く発見されれば、病院に入院して細菌を殺す抗生物質を4週間ほど注射すると治りますが、合計2ヶ月ほど入院となるでしょう。
しかし、破壊された心臓の弁は手術で交換しなければならなくなっていることが多いです。良く効く抗生物質の無かった時代には命取りの病気でしたが,衛生状態が良くなってこの病気は激減しており,今では珍しい病気です。
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