期外収縮の症状
期外収縮の症状は、一瞬で単発のドキン(ドキッ)が典型的です。「単発の一回完結」が特徴的です。それが時間をおいて(数秒から数時間の間隔)、何度も繰り返すこともよくあります。症状の表現は患者さんによって多彩で、様々な言葉で言われます。
胸が「ツマル」、「ポコン」、「バコン」、「ドキン」、「ウッと」、「クッと」、「バクバク」、「ハッと」、「中で空気が破裂する」、「ズキンと痛い」、「コロンと回る」、「一瞬の胸騒ぎ」、「心臓が動 きを一回休んだ」、「心臓が一瞬の空回り」、「胸が一瞬締めつけられた」、「脈が一回飛んだ」、「脈が一個抜けた」、などなどで す。→◆097 心臓病 「一瞬、ドキン (ドキッ)!」 これはどんな病気?
また期外収縮の感じ方や起こる回数も、個人差が非常に大きく、患者の症状だけから病気の程度を予測するのはなかなか困難です。→◆318 期外収縮 よく感じる人、分からない人、症状には大差ある
原因のストレスを見つける
1)期外収縮が初めて出た、2)しばらくなかったのだが数年ぶりに出始めた、3)別の病院で期外収縮の治療中なのだが治りが悪い、等々の理由で当院を受診する患者がいます。
どのタイプの患者であっても治療の原則は同じです。良性で危険のない期外収縮であれば期外収縮を誘発する因子を取り除くのが治療の原則です。
このタイプの患者では、様々な理由のストレスがその誘発原因になっていることが多いのです。よく話し合って誘因となっているストレスを発見することに努めます。話し合えばほとんどの患者ではその原因を特定できることが多く、ストレスを取り除く具体的方法を提案します。→◆213 不整脈 期外収縮の多発 ストレスが契機となる人が多い
時には抗不安剤の頓服
自己努力でそのストレスが取り除けなければ、時によって薬でそのストレスを押さえ込むために抗不安剤(安定剤)を頓服で処方することもあります。安定剤を毎日連続して長期間服用すれば、いずれ効果が減弱し、効果を維持するために薬の増量を余儀なくされます。また依存が起こり薬を止められなくなる可能性もありますからこの安定剤の処方には気を遣います。
しかしこの薬を頓服で使用すれば、使用頻度が少なければ、薬の大きな欠点を克服でき安心して使用できるのです。→◆121 「とんぷく=頓服」とは、どんな薬ですか?
もう一つの安定剤の大きな効用は、それを財布の中に常時2~3錠入れておいていつでもどこでも使えるようにしておくことで安心感が生まれるようです。私はこれを安定剤の「お守り効果」と患者に説明しています。財布の中に安定剤があると思うだけで「お守り」のように心が安心していられるのでしょう。
健康なら無害性だが・・
当院では多くの患者はこの様に軽い治療が中心です。無害性の期外収縮に本格的な抗不整脈薬を使用することはまずありません。しかし既に心臓病があってそれに伴って発生したような難易度の高い不整脈の場合は、こんなに簡単にはいきません。
そんな重い不整脈の患者では本格的な治療が必要になります。心臓病の専門病院や大学病院ではそのような患者が集中して数も多いと思います。当院のような第一線クリニックでは、そんな重い不整脈の患者はまず例外でほとんど見ません。
心臓病のない普通に健康な人に起こる期外収縮は、この程度の良性で無害な期外収縮がほとんどであると考えて良いでしょう。しかし油断出来ないのも事実で、いつもお話しするように心臓病の自己判断は危険です。一度は医師に相談して下さい。
高血圧:隠れた重要な原因
良性で無害性の期外収縮治療で注意すべきポイントは、高血圧がその発生の誘因となっている場合が少なくないことです。もちろんストレスが最も主要な原因と思いますが、高い血圧はそれだけでも心臓に大きな負担となって期外収縮を誘発する原因になる場合があります。
高い血圧の場合、安静時の血圧が140mmHg程度以上であれば、それを降圧薬で下げてやるだけで期外収縮が激減することは何度も経験しました。高血圧は心臓に悪い影響があります。高血圧が期外収縮発生の原因になっている可能性があるなら、発生はストレスと無関係かもしれません。もし原因のストレスが思いつかなければ、誘因は高血圧かも知れません。
高血圧が原因では、降圧薬で血圧を正常化するだけで劇的に治ります。症状が嘘のように消えてしまうので大変感謝されます。
血圧が少しくらい高くても大丈夫と思っても、期外収縮が出ているなら、その程度の血圧でも心臓に負荷となっている可能性を考え十分な降圧治療をすることが期外収縮の消失に結びつくでしょう。
抗不整脈薬が無効でも降圧薬が有効?
他の病院で良性の期外収縮に抗不整脈が投与されても効果なく当院を訪れた患者です。抗不整脈薬を一度中止し降圧薬を投与しただけで期外収縮が消えたことは幾度もありました。
高血圧が主な原因となっている期外収縮の場合は抗不整脈薬では効果不良と予想されます。たとえ軽症の高血圧であってもまず降圧薬の投与で期外収縮の反応を見ても良いかもしれません。
軽症高血圧であったとしても、それは安静時の値であり、仕事中では長時間かなり高い血圧になっている場合も予想されます。心臓にとってかなりの負担となっているかも知れません。これまでに期外収縮を降圧薬だけで治療し成功したことは何度もあります。
降圧薬は心臓にも直接影響する薬が多いですから、もしかして血圧が下がって期外収縮が消えたのではなくて降圧薬の心臓への直接作用が効いた可能性は完全には否定できません。
心臓病があるなら降圧は特に効果的
当院を期外収縮で受診する患者の多くは、それ以外に心臓病はなく、良性で無害な期外収縮です。しかし、もし既に狭心症、心筋梗塞、心房細動、心臓弁膜症、拡張型心筋症などの心臓病があるなら、なおさら高血圧の治療は良い効果があると思います。
心臓への負荷を減らす目的で血圧を常時正常化しておくことは、心臓を守るだけでなく期外収縮の予防や治療のためにも大切なことです。高い血圧が心臓への悪い影響は期外収縮の治療でも認識させられます。
*参考情報*
期外収縮は不安で増える
この期外収縮は何かの原因で一旦出始めると、しばらく出やすい状態が続くことがよくあります。これはストレスが引き金になる事が多いと話しましたが、そんな時期にはそのストレスがしばらく続くのでその間はこの不整脈も出続けると考えられます。→◆213 不整脈 期外収縮の多発 ストレスが契機となる人が多い
不整脈は不快な症状です。心臓の一瞬の異常な動きですから起こる度に短時間であっても不愉快な気分になるのです。この不愉快さを気にし始めると「また出るのではないか、出ると嫌だな」と考えるとその不安がこの不整脈を更に誘発し、ますます回数が多くなります。こんな患者が比較的多いこともよく経験します。不整脈の自覚症状そのものが新たな発生誘因となります。従って一旦出始めるとますます多くなってしまう悪循環に陥ります。
不安解消で期外収縮は消失
そんな患者の例を一つお話しします。
■60歳代女性です。数年前にこの期外収縮で当院を初めて受診しました。心電図、レントゲン写真、心臓エコー検査、24時間ホルター心電図などの所見を総合して、心配ない上室性期外収縮であることが分かりました。患者には「心配のない軽い不整脈です。起こると嫌な感じはしますが、それで危なくなったり命を失うようなことはありませんから安心して放置して下さい。気にしなければ自然に出なくなりますから、そのうちに忘れてしまうでしょう」とお話しして診察は終了しました。
その人が数年後に久し振りにまた来院しました。
「あれ以来、不整脈にはまったく悩まされずすっかり忘れていましたが、最近旅行中の電車の中で同じような不整脈の症状が出てきました。それ以来、不整脈の出る回数が徐々に多くなってきて今週は毎日のように出ています」というお話です。以前と同じように検査しましたら同じような不整脈が出ていました。一日の不整脈の回数も同じようであり、その他の検査にも大きな変化はありません。
「久し振りの不整脈ですから、この不整脈について少し神経質になってしまったのかもしれません。以前と同じようで大した病気ではありませんから、このままで様子を見て下さい。結果に安心して不整脈は消えてしまうかも知れません。消えてしまえばそれでよいでしょう。もし変わらなければもう一度診察に来てください」と話しました。これで患者の症状は消え安定した元の生活に戻りました。
不整脈が一度発生すると、その症状が気になって不整脈が更に誘発され回数がますます多くなる例です。こんな場合は診察と検査で安心すれば消えてしまうのが特徴です。
続く・・・
お勧め記事
●心臓病の「早期発見、前兆症状」なら
●心臓の「症状から病名」を探したいなら
●狭心症・心筋梗塞の「早期発見、前兆症状」なら
●速い脈、遅い脈なら
●期外収縮コラムの一覧
●心不全の「早期発見、前兆症状」なら