運動は減量の次に重要
前回、運動は体重の減量に対してはあまり効果がないとお話しました。しかし、別の意味で大変重要です。運動は、筋・骨格系や自律神経系を適度に刺激し活性化します。また心肺機能も適度に刺激します。全身の血液循環も改善されます。運動のこの効果は何者にも代えられない大切なものであり、全身を健康な肉体に改造するうえで必須の治療法です。しかし、心臓病がありますから、許容可能な運動量は主治医と相談で決めてください。
運動は無理に毎日する必要はありません。自分の生活スタイルに合わせて、週に一回から毎日までどれでも良いと思います。出来る範囲で結構ですが、その代わりにそのリズムを続けてください。持続が必要です。一回の運動時間は、可能なら20分以上にしてください。最初は少なめにして、体調を見ながら時間をかけてゆっくりレベルを上げてください。数ヶ月かけて目標の運動レベルに到達できれば十分です。
全身の運動機能をまんべんなく上げる運動と、個別の筋骨格系のレベルを上げる運動は違いますので、それぞれについて別々に実行してください。たとえば、全身については早足の散歩やトレッドミルでゆっくり走る運動を、個別の筋肉強化にはダンベルや機械を使った筋トレをするなどです。筋肉は年齢とともに確実に落ちていきますから、それを防ぐための筋トレは大切です。60歳を過ぎますと、この筋肉の減少は加速します。足腰の強化と全身の心肺機能については早歩きやゆっくり走るのが適切です。
その運動の強さの目安は脈拍数で評価します。目標脈拍数を決めて、その脈拍数にならない程度の運動にとどめてください。目標脈拍数の計算は、
目標脈拍数 = (220 – 年齢)x0.75
です。運動量の限界はこの脈拍数を一応の参考にしてください。しかし病気のある方は、その値について主治医とよく相談ください。
薬をきちんと飲むこと
当然ですが、これを実行しましょう。心臓病そのものの薬はもちろんですが、体の正常化のために必要な薬(たとえば肝臓病の薬、コレステロールの薬、尿酸を下げる薬、腎臓病の薬など)も、数や種類が多くなるからと言って嫌がらず、積極的に内服しましょう。
診察室のデータをすべて正常化させる
定期的に診察を受け、血液検査や尿検査をして、血圧、脈拍数、肝臓、腎臓、コレステロール(特にLDL/HDLが2以下に)、血糖やHbA1c、尿所見、貧血等のデータが、すべて20歳の正常値になるまで、薬の種類や量を調節してもらいましょう。Plan-Do-Seeの観点から、1、2ヶ月に一回は必ず検査してもらいましょう。これ以上に検査間隔が長いと目標が薄れてしまい、達成のための意欲と努力が持続できません。
検査結果を見たら必ず反省し、次の努力の方向性を考えてください。努力が限界近くにきているのにデータが目標値からまだかなり離れているなら、薬を増量してもらい、薬の力を借りてデータを正常化して下さい(つまり薬で治すことです)。それは恥でも何でもありません。利用できるなら現代医学の優秀な成果を積極的に利用することです。とにかく、あなたのデータの最終目標は20歳の正常値です。かなり厳しい目標ですが、薬の力を十分利用し、自分で努力もして、ぜひ達成し維持してください。
それ以外の目標
減塩食(一日摂取塩分、7~10g)、心不全の可能性があるなら水分制限(一日水分量は、1000~1200mi)、食事のコレステロールを減らす、野菜を多く摂る、禁煙、アルコールは適量にする(純アルコール換算で一日あたり30mi程度、日本酒なら1合)等々はどこでも書かれています。その通りです。強い意志で、全部実行してください。
次回はまとめで、「◆039 生活習慣改善 目標は、「血管」の老化防止」です。