要約: 心臓と全身血管という循環器系の病気を、宅配便の流通システムにたとえてみます。流通形態が非常によく似ているので「ミクロの宅配便」システムと呼びま す。いつも利用する宅配便の流通システムをイメージして下さい。体内の血液流通トラブルがカギとなる重大な病気は、交通障害が起こった場所によって病気は、
心配な時は医師に相談ください。
◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
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体の循環系は、宅配便の流通システムと酷似する
まず体の循環器系の正常な働きを、宅配便システムに置き換えて解説してみます。
全国(全身)の各家庭(細胞)は、道路(血管)を走る宅配便トラック(血液)から、食料などの生活必需物資(酸素や栄養素など)を受け取り、代わりに各家庭の生活ゴミ(二酸化炭素や細胞内で作られた老廃物)をトラックに渡します。ただし、どの家庭(細胞)も生活に必要な物資の入手とゴミの廃棄については、この宅配便経由でしかやり取りはできません。
トラックは家庭から集めたゴミを全国に一か所しかない巨大なゴミ再処理・処分場(腎臓、肝臓、肺など)に運び、そこで最終処分してもらいます。ゴミの一部は腎臓では尿として捨てられます。別のゴミは肝臓では化学処理されて別の無害な物質に変換され、胆汁(黄色:これが便の色です)として便に捨てられます。さらに別の種類のゴミ(二酸化炭素)については、肺で空気中に捨てられます。食物残渣は循環器系「ミクロの宅配便」システムには入りませんので、そのままで便として捨てられます。
食料品などの生活必需物資は品物別にいろんな場所(肺、肝臓、腸など)からトラックに積み込まれ全国の家庭に運ばれます。
「ミクロの宅配便」システムの驚くべき超巨大さ!
いつも使っている宅配システムとヒト体内の「ミクロの宅配便」システムとは似ている部分がたくさんあるのですが、決定的な違いの一つは、システムのサイズがヒトでは圧倒的に巨大なことでしょう。
ヒトの体では全細胞数は11兆個もあるそうですが、対応する地球上の全部の家庭数は60億戸以内?くらいでしょうか。比較にならないくらい巨大です。宅配するトラックの台数もこれまた巨大で、酸素を運ぶ専用トラック(赤血球数)でさえ26兆台も数があるそうです(参照資料1)。宅配する荷物は酸素だけではありません。もっと多種類があります。
酸素の荷物だけでも細胞数の2.5倍ものトラックを用意しています 。数値には異論もあるかも知れませんが、圧倒的に巨大であることに変わりはありません。
道路トラブルの通行止めで、病気が発症
宅配便トラック(血液)が走る道路(血管)は、全国(全身)に網の目のように細かく張り巡らされています。その全国すべての道路を埋め尽くすほどおびただしい数のトラックが、切れ目なしに道路を走り回り、全国の家庭(全身の細胞11兆個)に生活必需物資を直接宅配し、同時に各家庭からゴミを回収する二つの役割を果たしています。
もし道路がトラブル(血管の破れや閉塞)で車線規制や通行止めになると、トラックは荷物を運べなくなりますから、そこから先の家庭(細胞)は、直ちに生活が困難(細胞虚血:一過性脳虚血、狭心症などの病気)になってしまいます。もし事故処理が長びき通行止めが長時間続きますと、生活必需品の不足から、孤立した家庭の人々の命が失われます(細胞壊死:脳梗塞、心筋梗塞などの病気)。
完全な交通遮断に耐えられる時間は地域(臓器)によって差がありますが、普通の考えからすると、極めて短時間しか余裕がありません。脳地域の家庭(細胞)はたった数分~数十分しか耐えられません。心臓地域の家庭(細胞)なら8時間程度は耐えられるようです。髪の毛や爪はもっと長い時間だそうですが、これはあまり意味がありません。
最も大切な脳と心臓がこんな短時間しか交通遮断に耐えられないのです。 もし東名高速や東北自動車道などの大幹線道路(胸部大動脈、腹部大動脈に相当)の交通遮断なら影響の及ぶ範囲ははるかに甚大となります。
道路トラブルの病名
このように、道路(血管)の車線規制(一過性虚血)や交通遮断(血管閉塞)は直ちに緊急非常事態(病気発症)となります。交通障害が起こった場所(血管の異常が起こった場所)によって病名や症状は違いますが、現象としては起こった場所から先の細胞の機能異常や細胞死のために出てくる症状なのです。
道路トラブルでの車線規制や通行止めなどがカギとなる重大な病気としては、起こった場所によって、
・脳 :一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞、脳塞栓、脳出血、くも膜下出血
・心臓:狭心症(一過性虚血)、心筋梗塞
・手足:閉塞性動脈硬化症
・肺 :エコノミークラス症候群(肺塞栓)
などの病気があります。病名、症状、緊急度は違いますが、実質的には道路の交通障害が起こった場所の違いです。
荷物の流通状態:「健全か病的か」それが問題
道路トラブルの交通遮断を予防するには、血管の劣化や老化を防ぎいつまでも健全な状態を保つことです。この点が健康維持の重大なカギとなります。血管網を健全にしておけば、全身の細胞の劣化や老化もその進行速度をかなり抑え込めることが分かっています。
血管(道路)の老化と全身細胞(各家庭)の劣化・老化は全く同じではありませんが、似たようなメカニズムで進行すると考えられます。 全身の血管網の健康状態で、その人の全身の健康度も大きく影響されることになるのです。したがって、体内の「ミクロの宅配便」の流通状態が「健全か不調か、それが問題」となるわけです。
流通トラブルの発生原因、高血圧が最悪因子
血管の劣化や老化を早める因子は何か?、長年の多くの研究からたくさんの因子があることが既に分っています。多くの因子の中で、最悪の因子が高血圧だと考えられます。それ以外にも血管を劣化し悪化させる因子は、ストレス、高コレステロール、糖尿病、肥満、高尿酸、タバコ、運動不足などがあります。そして血管の劣化・老化の進行は、体全体の劣化・老化の進行を促進していると推測してよろしいと思います。
この流通システムで、心臓の役割
心臓は「ミクロの宅配便」流通システムのエネルギー源と言いますか、宅配便トラックへのガソリン供給役とでも言ってもいいでしょう。全11兆戸の個別細胞へ生活必要物資を配送し、全細胞から生活ゴミを回収する原動力となっています。
もし心臓が動きを止めると、全国の道路を埋め尽くすほどおびただしい数の宅配便トラック全部が、瞬時に、一斉に止まってしまいます。全身の全細胞は一瞬にして生活物資を受け取れなくなります。
脳の細胞は、たかだか10秒程度の交通遮断であっても意識を失うほど繊細なもろい細胞です。脳への遮断が数十分も続けば脳の細胞は死んでしまいます。 心臓と「ミクロの宅配便」流通システムが、生命維持にとっていかに重大な役割を演じているか、お分かりいただけると思います。
まとめ:心臓と「ミクロの宅配便」、この流通システムを健全に保てば、健康人生が期待できそうです
心臓と全身血管系を健全に保つことが出来なければ、将来の「健康長寿」を期待することは難しいと思います。
★参考資料2:
映画「ミクロの決死圏」(Fantastic Voyage, 1966)アメリカSF映画
監督:リチャード・フライシャー 、脚本:ハリー・クライナー 、撮影:アーネスト・ラズロ 、音楽:レナード・ローゼンマン 、出演:スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、アーサー・ケネディ エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル
製作国:アメリカ 、ジャンル:アドベンチャー/SF 、上映時間:100分
体内の神秘へ挑戦するミクロ人間!
驚異がきざむ3600秒の決死圏!
奇抜なアイデアと卓越した技術の勝利!”
“ Journey Into The Living Body Of A Man! ”
ストーリー展開
以下のストーリー解説は、Himagine「(暇人) K の ナッシング・トゥ・ルーズ」を全文引用しました。
物体を 細菌大に 縮小する ミクロ技術を 完成した チェコの科学者…ジャン・ベネス博士 が アメリカに 亡命してくる ところから 始まります…。ところが 博士は、敵側の スパイに 襲われ、脳出血を起こして 倒れてしまいます…。 そこで、医学上 空前の 試みが 行われることに なります…。
それは、医師と 科学者を乗せて ミクロに 縮小した 潜航艇を、博士の 頚動脈に 注射…潜航艇で 体内を 脳内出血部まで 移動し…患部をレーザー光線 で 治療する という とてつもない 作戦でした…。それにしても、当時から レーザー光線で 治療するという 発想は あったんですね…ちょっと 驚きでした…。
さて 1時間以内に 治療を 終えなければ、ミクロ化した 物体は 元の 大きさに 戻ってしまう なんていう 時間制限まで 設けられる中…潜航艇 プロテウス号 は、脳外科医 デュバル(アーサー・ケネデイ)、その助手 コーラ(ラクェル・ウェルチ)、循環器の 専門医 マイケルス(ドナルド・プレザンス)、海軍大佐 オーウェンス(ウィリアム・レッドフィールド)そして 特別情報部員 グラント(スティーブン・ボイド)の 5人を乗せて、博士の 体内に 潜入して いきます…。
ところが、実際に 潜行艇が 体内を潜行してゆくと…次から 次へと 思いがけない 問題が 発生します…。頚動脈を 通って、患部の 脳に 行くはずが…途中 血管の 内皮壁の 割れ目から 静脈に 入ってしまったり…結果 心臓を 突破することに なってしまったが ために、患者の 心臓を60秒間 止めなければ ならなかったり…。その後、何者かの 妨害工作で 推進用の 空気が 不足してしまった 時は…肺まで 行って、空気を 調達しました…。そして クライマックス…。
紆余曲折の 末、患部の脳にたどりついた 時には、すでに 時間が 6分しか 残されていませんでした…。果たして 彼らは、無事 治療を 終えて…時間内に 帰還することが 出来るのでしょうか…。そして、メンバーの 中にいる 裏切り者の 正体は…。
…という訳で 理科おんちの わたしに この映画の 突っ込みどころは わかりませんが…とにかく ドキドキ ハラハラ、充分 楽しめたのは 確かです…。あなたも、人間の体内を 潜行する という 未知の体験をしてみませんか v(=∩_∩=)…。
映画スチール写真
全てネットから拝借しました。
潜航艇の周りに浮かんでいる赤い大きな円盤が赤血球です。酸素を運ぶトラック役です。細胞(家庭数)が11兆個あるのに、赤血球(トラック)は26兆個もあるそうです。赤血球の血管内の密度はもっと高く、写真の様なまばらではありません。